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ヒルトップ農場へ その6

英国
10 /03 2018
英国旅行の続き、ヒルトップハウスの2階、寝室の次は宝物部屋へ。

宝物部屋(Treasure Room)は、4畳半ほどの小さな部屋。ここにビアトリクスの大好きなグッズが収められている。ビアトリクスは、ここで大好きなグッズに囲まれ、棚より取り出しては眺め楽しみ、イマジネーションを膨らませ、そして再び現実へ立ち向かう気持ちを奮い立たせていたのだろうか?

宝物を見て行く前に、ビアトリクス自身の収集歴について振り返ると、有名な話として10代の頃、昆虫採集で集めた虫たちをスケッチし標本にした。顕微鏡を用いて蝶の翅(はね)の花びらのように見える鱗粉(りんぷん)をひとつ、ひとつ丁寧にスケッチした作品も残されている。

キノコに夢中になっていた頃もあれば、化石や貝殻などを見つけ自然研究家としての興味から収集して描いた。

また別の側面から見れば、ビアトリクスは古きよきもののコレクターとして名をはせても良いぐらいのコレクションを所有している。

それぞれの部屋に配置されているアンティーク家具については既に紹介しているとおりで、それら家具に収められている陶器やフィギュアなども18世紀から19世紀初頭にかけてのものが集められている。

1階のエントランスホールにある白地に藍色の青花(せいか)磁器の大皿は、中国 景徳鎮の窯より生み出されたもので、17世紀に入りヨーロッパで大変な人気を博し盛んに輸出されたもので、これら青花磁器は大小合わせて11枚あった。
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そして、エントランスホールの暖炉に飾られている様々なホースブラス(棚の下ぶら下がっているもの)に加え、ロイヤルドルトンの水差しやマグ(棚の上、左から3番目、4番目、6番目がロイヤルドルトンの水差し、7番目、8番目がロイヤルドルトンのマグ)など。
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水差しは、水や酒類の容器としてでなく、水差しと「ボウル(Bowl)」と呼ばれる大き目のボウルを洗面ボウルのように、顔や手を洗うのに使用したことだろう。そう『こねこのトムのおはなし』でトムたちが顔を洗うみたいにね。
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また、現在のヒルトップでも水差しを花瓶のように使用されていたが、ビアトリクスも庭の花を摘み、水差しを用意して花瓶として利用していたことだろう。それにしても水差しの種類と数に驚く。

応接間の棚は、既に紹介した水差し以外にもまだたくさん並べられていた。大き目のマグも水差しと並べると花瓶代わりに使えそうだ。
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食器に関しては、きちんと戸棚に収められているからそれほどたくさんあるように思えないが、これまた隙間なく収められているので全部並べたら相当なコレクションであることは間違いない。

これらの食器は、ブランド名が分かるものだけでもそうそうたる顔ぶれで、英国4大名窯と呼ばれた「ミントン」、「ロイヤルウースター」、「スポード」、「ウェッジウッド」はもちろんのこと、「ロイヤルドルトン」、「ロイヤルコペンハーゲン」、「ロイヤルクラウンダービー」、「マイセン」など、ビアトリクスが生きていた時代に既にアンティークと呼ばれた100年前の食器を収集しているものだから、これら有名ブランドのアンティーク食器好きには垂涎の的であることは間違いない。

さらに、17世紀より19世紀までヨーロッパで人気を博したのは、中国風デザインを用いてヨーロッパで作られた陶器で、これらを「シノワズリ(フランス語Chinoiserieが語源)」と呼び、ビアトリクスもボウルや小皿などシノワズリの食器を多数揃えている。

1階応接間の食器棚。一番上の段に1770~1800年のシノワズリのボウル、二段目に1800年代ロイヤルクラウンダービーのティーポット、三段目に1800年代のロイヤルコペンハーゲンの大皿、下の段の真ん中に1710年シノワズリの大皿、その両脇に1840年のスポードの深皿。
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英国紅茶の歴史によると、1740年代を境にそれ以前は「ティーボウル」というカップにハンドル(取っ手)部分がない器で紅茶を飲んでいた。しかしそれ以降、テイーボウルにハンドルが付き、現在のカップ&ソーサーとなる。ヒルトップは、そんな紅茶の器の移り変わりとして、ティーボウルもカップ&ソーサーもそのどちらも見ることができる。こうして改めて応接間の食器棚を見ると、ニ段目の手前にある小ぶりボウルがテイーボウルで、三段目にカップ&ソーサーがある。


ビアトリクスのコレクション歴を少し垣間見たところでいよいよ宝物部屋を見てみよう。この部屋で一番に目が奪われるのはドールハウスだろう。
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このドールハウスは、『2ひきのわるいねずみのおはなし』に描かれたものではないが、パネルの開口部が閉じられ中はよく見えないものの、この中におはなしに描かれたキッチンテーブル、椅子、ナイフやフォークなどのカトラリー、フライパン、料理用レンジ(暖炉)、暖炉用火ばさみ、シャベル、フライパン、アイロン、鍋、やかん、ゆりかご、鳥かご、ブラシとちりとりなどなど。おはなしに絵が描かれたミニチュアパーツがこのドールハウスに収められている。もちろん、トム・サムとハンカ・マンカがめちゃくちゃにした石膏でできた食べ物、ハムや果物も。

ドールハウスの窓からのぞくと赤ん坊のゆりかごが。
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ドールハウスの上に、収集した貝殻と一緒にあるのは、お人形用のアクサリー。
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2016年から2017年にかけて日本で開催されたビアトリクス生誕150周年記念「ピーターラビット展」で、『2ひきのわるいねずみのおはなし』のモデルになったビアトリクスのコレクションのお人形が展示され、その際お人形とは別にお人形用のドレスが2点一緒に展示された。

お人形遊びをしたことのある方なら人形だけで飽き足らず、着せ替えなどして楽しむはず。ビアトリクスもドレスやスカートにジャケット、靴やアクセサリーなど色々とコレクションしていて、季節やシーンに合わせて着せ替えを楽しんだのかもしれない。そうしたお人形用の小さな櫛やブラシ、手袋などが見られる。

ドールハウスの両脇に置かれているのは、背もたれの形が特徴的な椅子で、1840年代のウォルナット材、ビクトリアン バルーンバックチェア(Victorian Balloon Back Chairs)がドールハウスを挟んで2脚ある。
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ビアトリクスの好きなコレクションにアンティークチェアも加えたい。各部屋、それぞれ用途に応じてデザインの異なるアンティークチェアが配置されている。これまた椅子好き、アンティークマニアにはたまらないコレクションではないだろうか。

ドールハウスと反対側にあるのは、黒檀色に塗られたショーケースキャビネット。ここにはたくさんの骨董品が並べられている。
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まず目につくのは、ブロンズ製のキャラクターたち。1930頃から製造されたもので、大きさは2㎝ぐらいの小さなものがずらりと並んでいる。
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ベンジャミン・バニー(写真下)と『グロースターの仕たて屋』淑女ネズミの陶器製(写真上)のブックエンド(M.M.Jones社製)があり、ドールハウスに入りきらないウェッジウッドのミニチュアで、グリーンやブルーのジャスパーウェアの水差し(3~5㎝)やマグなども形や大きさなど違うものがたくさんある。
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その下の段には、透かし模様の入ったミントンのプレート。このプレートは、シンプルなのにゴージャスな縁取りで、状態がとても良く、使用せずに眺める専用だったかもしれない。
プレートの右隣にあるのは、ドイツの名窯マイセンの1750年ティーキャディ。日本の駅弁のお供だった汽車土瓶のように、紅茶をティーキャディに入れて持ち運んだのだろうか?可愛らしい蓋つきの入れ物に、ビアトリクスもきっと心惹かれたに違いない。もうひとつあるマイセンのティーキャディは、隠れて見えないものの壺のような形に蓋がついた1765年のもの。
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ショーケースの下段真ん中にあるのは、1830年のスタッフォードシャ―で作られた黒光りした独特な色合いのティーポット。これは釉薬してから窯に入れるのではなく、焚口から食塩を投入し窯内に食塩蒸気を発生させるという塩釉手法によるもの。

小さな箱類もたくさんある。白い卵型の入れ物や、螺鈿細工が美しい箱、べっ甲細工のもの、おしゃれな婦人が描かれた丸い陶器の箱も。ショーケースの中だけでなく、各部屋に箱類が数個あることから、箱も必要に応じて色々な種類が増えたのかもしれない。

蓋の部分に型抜き模様が入ったもの(黄色矢印)も何点かあった。これらも箱類のようだが、白粉入れのものもあるようだが、タイガーアイを加工したものもある。どれも上部に同じような模様がある。ひとつの仮説としてペーパーウェイトとして使っていたのではないだろうか?絵を描いたり、手紙の返事を書いたり、紙の仕事をしている人にとってペーパーウェイトは何かと重宝すると想像してみた。
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もうひとつある黒檀色に塗られたキャビネットは、ウェッジウッドのジャスパーウェアの壺が対になるよう並べられ、真ん中にあるのもジャスパーの1800年の花瓶。
その下の段にあるのは、ロイヤルクラウンダービーの花瓶が対になり、真ん中に真っ黒で黒檀色と色が被ってはっきりとしないが、ウェッジウッドのバサルトウェアの壺がある。
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2階の各部屋は、たくさんの絵画作品が飾られていて、部屋ごとに少しずつその趣向が変わっていくのも興味深い。寝室はウィリアム・モリスの壁紙がひとつのアート作品のようだった。宝物部屋は小さくて可愛らしい作品が中心だ。中でもビアトリクスに影響を与えた挿絵画家、ランドルフ・コールデコット(Randolph Caldecott)の作品「6ペンスの唄をうたおう(下)」と「果樹園で洗濯を干す女性(上)」。
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花の絵は、バレンタイン・バーソロミュー(Valentine Bartholomew)の「ロサ・ガリカ(左、バラの一種)」と「プリムラ・ファリノーサ(右、セイヨウユキワリソウ)」。この画家は、ヴィクトリア女王専属の植物画家(Flower Painter)で、「アザレア」など作品がV&A博物館に所蔵されている。
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美少女が描かれたこの作品は、ジョージ・ダンロップ・レスリー(George Dunlop Leslie)の「桟橋の二人の女性(Two Young Ladies on a Jetty)」1884年。レスリーの作品は、19世紀の生活様式を写実的に描かれた作品が多く、テートギャラリーやロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン)に作品が所蔵されている。
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もうひとつ紹介したいのが、多分ケイト・グリーナウェイ(Kate Greenaway)の「Valentine(1875年)」の作品。
三大絵本作家と呼ばれる、ウォルター・クレイン、ケイト・グリーナウェイ、ランドルフ・コールデコットで、その内の二人の巨匠の作品が飾られていることになる。
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なんとも贅沢で、部屋全体に好きが詰まった宝物部屋だ。この部屋の片隅にある書き物机が、宝物部屋を飛び出し日本の各地を「ピーターラビット展」で巡回した。この部屋の中にあると周りのお宝が凄すぎて、この部屋の中ではひっそりと目立たないけれど、日本でまじまじと家具の美しさを堪能させてもらった。
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ビアトリクスの好きなものに囲まれた宝物部屋。彼女の一面がまた分かってきたところでさらにまだ残り2つの部屋も紹介しなければ。もうヒルトップはお腹いっぱいと言われそうなボリュームになってしまったけれど。この続きは次のブログにて。
 

ラピータ

ピーターラビットの生みの親ビアトリクス・ポターの愛好家で、作品について、開催されたピーターラビットのイベントやグッズ紹介、ピーターラビットの故郷英国について紹介するホームページ「ラピータの部屋」のブログです。
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