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ヒルトップ農場へ その5

英国
09 /08 2018
英国旅行記の続き、ビアトリクスが本の印税と、叔母からの遺産を資金にヒルトップ農場を購入したのが1905年。それまでに既に6冊の絵本を出版し、そこから先ヒルトップ農場や、農場のあるニアソーリーが絵本の舞台として度々登場する。

と、これまでの大事な年号をおさらいをして、さて続きを。

ヒルトップハウスの2階は、寝室、宝物部屋、プライベートの居間、ニュールームの4つの部屋が公開されている。

まずは寝室へと足を踏み入れた。ベッドの横に置かれているのは「アメリカン・ウィンザーチェア(Windsor chair)」で、シェーカー教徒が1800年頃に作ったシェーカー家具。ビアトリクスはこれを「永遠に残すべきもの」と思うほど特筆すべき素晴らしい椅子。
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寝室の場面で真っ先に思い出すのは、『こねこのトムのおはなし』で、「悪いことしたこどもはベッドで寝ていなさい」と寝室に閉じ込められる場面に描かれたベッドを思い出す。

当然、この場面で描かれたベッドが寝室にあるのかと思いきや、さにあらず。『こねこのトムのおはなし』が出版されたのは1907年。寝室のベッドを購入したのは、ビアトリクスが結婚して住居をヒルトップハウスからカースルコテージに移り住んだ1914年頃。

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改めてベッドを見てみると、4つの柱で支えられた17世紀の湖水地方産 天蓋付きベッド(Four-poster bed)で、天井部分はひし形に彫られたパネルが16枚はめこまれ、へッドボード(Headboard)にも見事な模様の彫刻が掘られている。

ベッドの周りを囲うようにかけられている濃い緑色のダマスク柄生地のカーテン(Bed hangings)は、カーテン上部のレールが見えないように覆うヘッドクロス(Head cloth)もセットになり、そのどちらにも花柄模様が刺繍されている。

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この刺繍は、ビアトリクス本人が金襴ブロケード(今風に書くと、カラフルな絹糸)で刺したもので、「外にあまり出かけられない私にとって刺繍することは良い娯楽」と晩年70歳を迎える前より刺し始めたもの。

1914年以降の作品でベッドが描かれているのは『妖精のキャラバン』の口絵で、緑色のカーテンとお揃いの生地のヘッドクロスも描かれた天蓋付きベッドがある。まったく同じではないものの雰囲気はそっくりだ。

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さらにこの部屋の最大の特徴である壁紙は、ウィリアム・モリスのデイジー(ヒナギク)模様。他の部屋と違って、モールディングで仕切った上部にデイジーの壁紙、下の部分は同系色の模様無しと貼り分けている。

ビアトリクスはモリスの壁紙について「水彩画作品や写真など飾る場合にはとても不向きな壁紙、でも天蓋付きベッドの背景にはとてもふさわしい壁紙」と語った。

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パッチワークのキルトカバーはアメリカのもの。

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椅子といえば、冒頭の『こねこのトムのおはなし』で寝室に転がっていた椅子。寝室のベッドと反対側の壁、ブランケットチェストの脇に置かれている1700年代のウィリアムアンドメアリー様式の椅子は、座面が籐(cane-seated)を編み込んで作られたもの。もしかしたらこの椅子がと思ったら、絵本に描かれたものとは少し違っている。

後日、ナショナルトラストコレクション(←ここをクリックするとコレクションが見られます)から、絵本に描かれたそっくりな椅子(座面の膨らみ具合や背もたれのデザインなどから)を見つけた。座面がイグサで編み込まれた1800年代の椅子。ホークスヘッドにあるビアトリクス・ポター・ギャラリーにて展示されていることになっているが、入ってはいけない扉の向こうにあったので撮影できなかった。

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壁に掛けられたオウムと鴨の3枚の絵画をひとつの額に入れている作品は、サミュエル・ディクソンのグワッシュ画法で描かれた1750年頃の作品。この作品の裏にビアトリクスのメモ書きで「子どもも見ると思うからオウムの作品(真ん中)の上に描かれた蝶を取り除くべき」とある。確かに空を飛ぶ見た目がクラゲのような蝶で不思議な感覚に陥るので、最もな意見かも。

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ビアトリクス自身が刺繍したベッドカーテンとは別に、寝室には二つの「サンプラー」と呼ばれる刺繍作品がオウムと鴨の作品の両脇にかけられている。2016年、資料館のクリスマス企画展で「刺繍で親しむピーターラビットと仲間たち」をテーマで展示した際、このサンプラーについて紹介した。

サンプラー(280x270mm)は、手芸の技を磨くため、色々な柄やアルファベットを寄せ集めたデザインのことで、ビアトリクスはこれをどのような経緯で入手したのかまでは分かっていないものの、金色の糸のみで仕上げた縫い目がとても細かく、またモチーフの位置決めの正確さなどから仕上げた人の技術の高さが伺える作品。もうひとつのサンプラー(←ここをクリックするとコレクションが見られます)はさらに細かい手紙か書籍の一部を図案化したもの。

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暖炉にも素敵なエピソードが。

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1934年、ウィリアムはビアトリクスとの結婚21周年を記念し「W H B」の頭文字と「1934」の年号を刻んだまぐさ(暖炉上部の木製炉棚部分)を取り付けた。

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その炉棚に、1階の応接間でも見たスタッフォードシャードッグと呼ばれる置物、スパニエルが飾られている。真ん中にあるジャグは、スタッフォードシャ―の「The Farmer Arms」と呼ばれる水差し。

寝室はビアトリクスが気に入ったものだけでなく、それらに感化されて自ら刺繍したり、ビアトリクスのこの家に対する思いが一番こめられた部屋ではないだろうか。さてこの続きはまた次のブログにて。続きのブログをアップする間隔が段々長くなっているような(^^;
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ラピータ

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