英国旅行記2018年 湖水地方 ヒルトップ農場へ その8
英国英国旅行の続き、旅行に出かけてから既に半年が経過しましたがまだ全然先に進まず(苦笑)。気を取り直してヒルトップハウスの2階ニュールームへ。
この部屋は、1906年に増築した2階部分で、他の部屋よりも約60㎝ほど天井が高く、壁2面に窓があり、明るく開放感を感じる部屋だ。最初「図書室」と呼んでいた頃は、弟バートラムの大きな作品(油絵100号サイズ)を飾るためだけに使用していた。

この部屋で真っ先に目が奪われるはこうしたバートラムの特大サイズの作品4点だろう。作品と作品の間に、モダンな飾り柱(ピラスター)が仕切りのように取り付けられている。
図書室として呼んでいた頃はあまり使用されることのなかったこの部屋が、書き物机やビアトリクスの好きなアンティーク家具を配置することで、ヒルトップハウスの内でほぼ毎日のように執筆活動する部屋となった。
書き物机の前に配置されているアンティークチェアは、19世紀ドイツの家具職人ミヒャエル・トーネット(Michael Thonet)の作品、ベントウッドチェア(曲木椅子 bentwood chair)で、祖母ジェッシーがカムフィールド・プレイスで使用していたもの。
書き物机の上にあるのは、サギ科の仲間「ヨシゴイ」の標本。ヒルトップハウス内でゲストに最も質問されるものについて紹介されているスタッフブログによると、この標本もその内のひとつだそうだ。
反対側の壁には蝶の標本も展示され、ビアトリクスが熱心に調べたであろう1633年出版の「ジェラードの本草書(Gerad's Herbal)」などもあり、ビアトリクスの博物学への探求心を垣間見ることができる部屋。
壁に吊り下げてあるキャビネットの内のひとつは、チェスの駒、象牙の置物などがあり、
ビアトリクスと日本といえば、ビアトリクスの1882年(16歳)の作品に、歌川広重の練習「諸職画通三篇」の背表紙が描かれていることが分かり、河野先生がこの発見を2014年にプレスリリースされた。
もうひとつの食器類が並べられているキャビネット内の隅にあるのも、日本製の浮世絵絵皿と、戦国武将柄の蓋付きコーヒーカップ(1900年製)がある。ビアトリクスのお眼鏡にかなったものの中に、日本のものも含まれているという事実があるだけで嬉しい。そういった棚の中にあるものも目を皿のようにして楽しめるということは、マニアックな世界へさらに足を一歩踏み込んでしまったようだ。
象牙の置物中に混じって象牙の柄がついたコルク抜き(Corkscrew)がある(写真はチェスの駒の入った、壁に吊り下げてあるキャビネットの棚上から5段目の真ん中辺り)。食器棚にはルビー色のアンティークグラス(一番上の棚)があり、ワインを嗜むこともあったのだろうかと想像が広がる。
食器棚の上から2段目の左にあるのは、父ルパートの絵付けによる脚付きカップと、その奥にソーサーがあり、ビアトリクスが6歳の頃の思い出の品だ。

この部屋には弟バートラムの作品だけでなく、家族全員の作品が勢ぞろいしている。上から母ヘレンの湖畔の景色を描いたもの、父ルパートの「3匹の盲目ネズミ」、ビアトリクスの「糸車」。家族共通の趣味が絵画であり、芸術家一家という側面も改めて垣間見ることができる。
この部屋の紹介冒頭に戻り、壁2面に窓があるという部分、部屋の入口を背にした右側の窓に注目すると、スタッフの方が作業されているにもかかわらず、お願いすると快く立ち上がって場所を開けてくれた。
この窓から望む景色は、モスエクレス湖へと続くストニー通りが見え、『ひげのサムエルのおはなし』で描かれた。
ようやく長い長いヒルトップハウスの旅行記が終了しました。次はヒルトップの庭とショップへ続きます。この続きは次のブログにて。