開館13周年記念講演「古英語で読む『ピーターラビットのおはなし』と英語の歴史」のレポート

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大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館が、開館13周年を迎え、4月14日に記念講演が開催されました。

講演会の講師は、大東文化大学 文学部英米文学科 教授 網代敦先生です。先生は、古英語のスペシャリストで、執筆されている論文も数多く、冒頭の挨拶で資料館館長の河野先生より、「古英語の第一人者」とご紹介がありました。

この講演に参加する前、「古英語」とは、「言葉の成り立ち」であり、「語源」であるという認識でした。例えば、ビアトリクスの聖地である英国 湖水地方にある「ニア・ソーリー(Near Sawrey)」という地名の「ソーリー(Sawrey)」は、古英語の「岸辺の葦(アシ)」という語源よりこの地名となったという説。

ニア・ソーリーにあるエスウェイト湖に、葉がのこぎり状になった葦が生えていたことから、このような地名となったのでしょうかと想像します。

それから今回の講演会は「古英語」だけでしたが、ヴァイキング時代に英国北部に住みついた人たちが使用した「古北欧語(古ノルド語)」が語源である言葉も数多く残されていて、先程の「ソーリー(Sawrey)」は、古北欧語の「saurr」から「ぬかるんだ土地(muddy place)」という意味が語源という説もあります。

言葉の語源は、諸説あり、調べれば調べるほど沼地にはまるかの如く、時間があっという間に過ぎてしまいます。

英国 湖水地方は、古英語や古北欧語を語源とする言葉が数多く存在し、そういった言葉の使われ方を知っていると、同じ湖でも大きさにより使われる言葉が違うことに気がづきます。

例えば、大きな湖を示す言葉に、古英語が語源の「ミア(mere)」が使用され、小さな湖や池を示す言葉に、古北欧語が語源の「tjqrn」が語源でそれが現在の「ターン(tarn)」になったように。

こうした言葉の意味を踏まえて、湖水地方最大の湖、ウィンダミア湖にはミアが使われているので大きな湖ということになります。

そしてビアトリクスが夫ヒーリスと散歩を楽しんだ湖、モス・エクルス湖は、本当は「Moss Ecless Tarn」という名前で、日本語訳で語源の意味も含めると「モス・エクルス小さな湖」となりますが、地名に小さなと入れる訳にもいかず「モス・エクルス湖」と、どちらも同じ「湖」と表現されますが、現地の人たちは「mere」と「tarn」で大きさの違いが分かります。

説明が下手すぎますが、ニア・ソーリーの名前の由来や、湖の大小で名前が相違することなど、調べれば調べるほど沼地に入り込むかのように深みにはまってしまう意味が少しは伝わったでしょうか?そして段々と楽しくなってきませんか?

ここから本題の講演会ですが、私の期待は見事なまでにいい意味で裏切られました。

網代先生は、冒頭「ベオウルフ」を朗読してくださいました。先生は最初小さな声だったのですが、「ベオウルフ」の朗読が始まった途端、息がとまるほどの衝撃というか、その素晴らしい言葉の音色のような調べに聞きほれてしまったんです。まさしく目がハートになっていたと思います。

なんという心地好い、優しい響きだろう。これが言葉の魔力というものだろうか?とさえ感じました。

「ベオウルフ」は8世紀ぐらいの詩で、私も読みたい、読めるようになりたいと心の底より思いました。そのことを最後に質問したら、「ぜひ大東文化大学に勉強しに来てください」というオチがつきましたが(笑)そりゃそーだ!

言葉の語源?
そんな難しいこと知らなくても、朗読された古代人同志がコミュニケーションで使われた言葉の魅力に叶うものがあるでしょうか?本当に良い意味で裏切られ、すっかり古英語の魅力にはまりそうです。

また「ベオウルフ」の朗読を聞き、あるシーンがよみがえりました。

ジブリ映画の「天空の城ラピュタ」で、シータがピンチの時に唱えた呪文「リーテ・ラトバリタ・ウルフ アリアロス・バル・ネトリール」という言葉の響きが、古英語に少しだけ似ていたようにも感じました。

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前回紹介した古英語の『ピーターラビットのおはなし』の表紙に書かれた、作者ビアトリクス・ポターの部分に使用された文字(書籍表紙の一番上)は、ルーン文字で、ヨーロッパ大陸で古代ゲルマン人が用いた言葉で古英語の表記に使われた文字だそう。

さて、本文に入る前に、どうしても古英語に翻訳できない言葉として外来語があり、ラテン語以外の外来語は古英語にはないため、「ラビット rabbit」という外来語は、「ノウサギ hare」に置き換え、古英語の「hara」と工夫されている部分の解説がありました。

また、名前の翻訳の工夫として、フロプシーは「耳をパタパタするflop」から、ウサギの耳を連想する「しなやかな、曲がりやすい」という言葉が使われていたり、モプシーは「少女、幼女 mop」から、はつらつとしたイメージ「植物の小さな新芽」という言葉が使われ、カトンテールは「ふさふさしている尻尾」という言葉が使われいるそうです。

(古英語表記で書きたいのですが、ルーン文字に変換できません)

これらを踏まえて、古英語の『ピーターラビットのおはなし』の最初の部分を古英語で朗読してくださいましたが、これもまた音楽のような、心地よい響きで、この心地よさはどこから来るのだろうと思いましたら、参加者の方がご親切にも「同じ音がいくつも使われ、頭韻(力強い感じ)、脚韻(柔らかい感じ)が耳に心地良いからですよ」と教えてくださいました。なんてお優しい~ありがとうございました。

「なるほど~!」って、分かったんかい!!!いえ、全く分かりません(笑)

この後、語源についての解説があり、古英語の複合語についてはクイズ形式で解説してくださいました。かなり頭を使わなければ思いつかない問題でしたが、こうして楽しく解説していただけると難しい内容が面白く楽しかった。

最後に、表紙に描かれた挿絵についての解説がとても興味深く、これと全く同じ挿絵が中世ヨーロッパの写本に描かれていたのを見つけてくださいました。

同じ画像がないものかネットで調べましたら、以下のリンク記事をクリックして、最初に出てくる画像をクリックして2枚目にあります。

リンク:
ニュースサイトCNNの記事(2015/6/15)
中世のいたずら書きに見るユーモアのセンス
http://edition.cnn.com/style/article/medieval-subversive-art/index.html

うさぎのイメージは「臆病」で、人や猟犬に追われ逃げ惑うという部分より、多くの人がこのように感じることからですが、しかしこのイメージを逆転させることで、人々が奮起し、強い者に対するあらがい、しっぺ返しを面白いと感じる。

このようなウサギが強き剣士となり、立ち向かう姿が、中世の写本の周辺部に描かれ、それが今回の表紙に採用されたようです。

これで私の謎だった部分が解決し、そして古英語の旋律を奏でるかのような不思議な音の魅力にすっかり魅了され、癒された講演でした。本当に楽しかった。できることならば、もう一度講演を受けたいです。でもそれは大学に来て下さいという先生のご要望に応えなくてはいけませんけどね。すっかりオチがついたところで、講演会のレポートとさせていただきます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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ピーターラビットの生みの親ビアトリクス・ポターの愛好家で、作品について、開催されたピーターラビットのイベントやグッズ紹介、ピーターラビットの故郷英国について紹介するホームページ「ラピータの部屋」のブログです。
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