英国旅行記2018年 『グロースターの仕たて屋』の挿絵に描かれた町の建物や通りを散策

グロースターの町のメインイベント「グロースターの仕たて屋の家」を訪れた後は、『グロースターの仕たて屋』に描かれた町の景色を探しに散策しました。

グロースターの町は、初めて訪れる観光客にとっても分かりやすい町で、町の中心部となる十字路より東西南北にそれぞれ通り名がついていて、ビアトリクスが描いたのはウェストゲート通り(Westgate street)が中心となります。

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グロースターのインフォメーションで配布された地図より。
この地図の青く塗られた通りの真ん中の十字路が、町の中心部になります。そこから東西南北に通りが分かれていますが、ウェストゲート通りを中心に紹介していきます。この地図を参照しながらの内容になりますので、時々地図を見ながらお楽しみください。

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「グロースターの町に、ひとりの仕たて屋が住んでいた。仕たて屋は、西門通りに小さな店を持ち、」
『グロースターの仕たて屋』ビアトリクス・ポター(著)石井桃子(訳)より

「西門通り」と翻訳されたのが、ウェストゲート通り(Westgate street)で、地図の赤丸20番となっているのが、「グロースターの仕たて屋の家」アトラクションです。ウェストゲート通りから、コレッジコート(College Court)という名前がついた路地に入った瞬間から、おはなしの舞台となっていますのでお見逃しなく。詳細は、2018年英国旅行記のひとつ前のブログを参照してください。


「仕たて屋は、店から外に出て、雪の道を足をひきずりながら家に向かった。仕たて屋はすぐ近くの大学通りに住んでいて、家は大学の前庭の隣にあった。」
『グロースターの仕たて屋』ビアトリクス・ポター(著)石井桃子(訳)より

次に仕たて屋の店から一緒に暮らすシンプキンが待つ自宅へと移動しましょう。「大学通り」と翻訳されたのは、店がある路地のコレッジコート(College Court)のことです。仕たて屋は店を出て、大聖堂(Cathedral)へと続くセント・マイケルズ門をくぐりました。そうしたら目の前に大聖堂が見えます。

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セント・マイケルズ門をくぐったら、

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すぐ目の前に大聖堂。

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右手のレンガ造りの建物2階の辺りの表記を見ると「コレッジグリーン(College Green)」とあり、その建物の左隣の通路がセント・マイケルズ門です。門といっても、ただくぐり抜けるだけです。

この場所の通りの名前を確かめたい時は、通りの近くにある建物の角を探すと、日本の電信柱に番地が表示されているように必ず明記されているので便利です。

仕たて屋の住んでいた家は、「大学の前庭(College Green)の隣にあった」とあります。翻訳は「大学」とあるので、近くに大学があるのかと思ってしまいます。しかし目の前にあるのは大聖堂です。そして、大聖堂の前にある広場が、大学の前庭と翻訳されたコレッジグリーンです。住んでいた家は、その隣にありました。

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「All the way up Westgate, and down the lane - called Three Cocks' Lane-(ウェストゲート通りをさらに進んだスリー・コックス通りと呼ばれる路地にある)」
この書籍は、フリーダ・ムーア宛に送った『グロースターの仕たて屋』オリジナル原稿(1901年)を書籍化したものです。表紙に描かれているのは、仕たて屋がシンプキンと一緒に暮らしていた家。

さて、その隣にあったというのは、スリー・コックス通り(Three Cocks Lane)のことです。どうして通りの名前が分かるのかと言いますと、フリーダ・ムーア宛に送ったオリジナル原稿(上に紹介している書籍)と、私家版に、住んでいた通りの名前が書いてあるからです。出版されたものには、その隣にあったと、通りの名前は記載しませんでした。

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『グロースターの仕たて屋』で、オリジナル原稿(上に紹介の書籍の表紙にあった図)より描き直しされた同じ挿絵。

地図を見ていただくと、赤丸7番の大聖堂(Cathedral)の西隣の通り、ウェストゲート通りに面した通り名に小さい文字で「Three Cocks Lane」と書かれています。そこに仕たて屋が住んでいた家がありました。

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スリー・コックス通り Three Cocks Lane
今はご覧の通り真新しい建物にかわってしまいその当時の面影すらありません。この挿絵に描かれたような、3つ並んだ切妻屋根のチューダー様式の建物が、ここにあったそうです。しかし、同じようなチューダー様式の切妻屋根の建物が、グロースター・アンティークセンター(アンティークショップ)の屋根部分として保存されています。

以下のURLをクリックしていただければ、建物の切妻屋根の部分を見ることができます。挿絵に描かれた連なった切妻屋根の雰囲気だけでも感じていただけると思います。

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チューダー様式の切妻屋根のある建物の1階と2階部分がアンティークショップ。

次にスリー・コックス通りからウェストゲート通りに戻ってさらに西側に目をやると、空に向かって尖塔が突き出ている建物が見えます。

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聖ニコラス教会(St. Nicholas Church)
こちらは建物から突き出た時計に注目してください。

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『グロースターの仕たて屋』より

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この挿絵にある通りに突き出た時計は、この教会の時計と思われます。さらにこの挿絵の左側に描かれている建物、2階部分が張り出している建物は、地図の赤丸15番のグロースター民俗博物館(Gloucester Folk Museum)です。

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グロスター民俗博物館

もうひとつ注目すべきものとして、挿絵に描かれている左側に王冠マークの看板と、右側に太陽の看板があります。民族博物館のあった場所にクラウン・イン(Crown Inn)という宿屋が、サン・イン(Sun Inn)という宿屋はもう少し離れた場所にあったそうですが、王冠と太陽という名前の宿屋がウェストゲート通りにあったそうです。ビアトリクスがこの町を訪れた時には、どちらの宿屋も廃業していたそうですが、偶然の一致として興味深くありませんか?

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時計と言えばもうひとつ紹介したいものがあります。これは『グロースターの仕たて屋』とはまったく関係がありませんが、地図の最初に紹介した中心となる十字路からサウスゲート通り(Southgate Street)に曲がったすぐのところにある、建物から飛び出している時計があります。

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ベイカークロック(Baker Clock)
そして時計の下には、等身大のフィギュアが設置されていて、このフィギュアは真ん中に時を司る神ファーザー・タイム(Father Time)がいて、左からアイルランド夫人、イングランド人、スコットランド人、ウェールズ夫人となっています。これらのフィギュアはからくり仕掛けで、ジャコビアン様式で装飾された時計の下より出ているロープを引っ張り時間を知らせ、観光客の注目を集めています。

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グロースター州ホール(Gloucester Shire Hall)地図の赤丸11番
ここで再び実話に戻りますが、ジョン・プリチャードの仕たて屋が市長のスーツを作るところから端を発しました。ジョン・プリチャードは、夜に妖精がやってきてスーツを仕立てたと宣伝に使いましたが、ビアトリクスは妖精ではなく、恩返しの優しい仕たて屋ネズミに変えて不朽の名作に仕上げました。

おはなしでは市長が結婚式に着用するためのスーツでした。実話の方は、町の中心部の十字路にあるギルドホールから、ウェストゲート通りをグロースター州ホールまで、毎年恒例の「年度初苗とフルーツのオープニングを祝うショー」のためのパレードがあり、その式典のためにスーツを依頼しました。

このグロースター州ホールの印象的な正面装飾は、ロンドンの大英博物館をデザインした建築家によるものです。しかしこの建物は、第2次世界大戦後のものとなり、ビアトリクスが目にしたものではありません。


州ホール(Shire Hall)より、ウェストゲート通りを挟んだ反対側の通り、コレッジ通り(College Street)も見どころ満載です。

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真新しい建物ですが、切妻屋根風の屋根が連なる先に大聖堂を見ることができます。挿絵に描かれたのは、コレッジコート通り(College Court)から見る景色ですが、コレッジ通り(College Street)からの方が大聖堂はよく見えるのでお勧めです。

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フリーダ・ムーア宛に送った『グロースターの仕たて屋』オリジナル原稿(1901年)を書籍化したものより。

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オリジナル原稿に描かれた挿絵と同じチューダー様式の建物は、コレッジ通りの向かい側にあり、ビアトリクスが描いたそのままに見られます。
2003年にグロースターを旅行した際は、ここに陶器屋さんがあり、たくさんのフィギュアが展示されていました。また訪れるのを楽しみにしていたのですが、陶器屋さんではなく貸店舗となっていました。移転されたかどうか不明ですが残念です。


『グロースターの仕たて屋』は、ビアトリクスの従妹のキャロライン・ハットンから聞いた実話を基にして作ったものですが、この実話を面白いと思った彼女がまずおこなったのが、話を聞いた翌日にグロースターの町をスケッチしたことでした。

一番最初にスケッチした場所は、実話のジョン・プリチャードが経営していた仕たて屋の店で、ウェストゲート通りからコレッジコートへと曲がる向かい側の正面にありました。

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スウォード・イン(Sword Inn)
現在、その仕たて屋があった場所は、酒場 パブを営業する店となっています。名前の由来となっている剣の看板が素敵です。

看板といえばひとつ残念なことがあります。

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フリーダ・ムーア宛に送った『グロースターの仕たて屋』オリジナル原稿(1901年)を書籍化したものより。

食べ物がなく空腹なシンプキンがクリスマスイブの晩に、町にさまよい出てあちこちから聞こえる楽し気な唄に八つ当たりする場面です。この挿絵は出版されたものには使用されませんでしたが、この看板が残念なのです。

看板に描かれたのは、ゴールデン・キャンドル(金色ロウソク)で、市長がオーナーの食料雑貨店の店先にあったものだそうです。しかしその店にあったとされるそのような看板は資料画像にもなく、その店の象徴となっていた建物正面にあったゴールデン・ホッパー(金色バッタ)の像が、先程紹介した民族博物館に展示されています。ビアトリクスが描いたこの看板も一緒に保存していただければ良かったのにと残念に思います。


これで『グロースターの仕たて屋』で描いた町や通りの景色については、大体のところ紹介しました。
「えっ、ひとつ説明が抜けてるって?」

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『グロースターの仕たて屋』より

「はい、その通りです。この挿絵が描かれた場所が幻となり、見たくても見られない景色だからです。」

この挿絵に描かれた風景こそが、2018年英国旅行記のひとつ前のブログで紹介したすっかり変わってしまった風景となります。たまたまグロースターの書店で購入した「Gloucester Through Time(グロースター移りゆく景色)」に、再開発される前の景色の写真が掲載されていました。

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「Gloucester Through Time(グロースター移りゆく景色)」Rebecca Sillence(著)2011年出版

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ノースゲート通り(Northgate Street)のオックスボディ通り(Oxbody Lane)
「Gloucester Through Time」P40より

現在は、オックスボーデ通り(The Oxebode)と名前が変わり、1930年代に再開発され大型デパートデベンナムがあることでも知られています。地図のノースゲート通りのデパートメントストア(Department Store)とある辺りです。すぐ近くにキングス広場(Kings Square)があり、広場でくつろぐ人たちでにぎわっていました。

ということで、2003年から続くこの挿絵に似た風景を探し求める旅は、幻だったという結論で終了しましたが、その風景によく似た景色を探すというミッションが残っていました。

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ウェストゲート通りのブル通り(Bull Lane)
この場所は、南から大聖堂に向かってブル通りを歩いた時に見つけた景色です。大聖堂の向きは北にあるノースゲート通りから見るのと違いますが、幸いなことに大聖堂の柱は真四角なので、見る向きが変わっても見える景色はあまり変わりません。より近づけるためにセピア色にしてみました。近代化された建物に目をつぶっていただければ、何とはなしに雰囲気は伝わると思います。

「えっ?ちっとも挿絵の雰囲気が出てないよ!」って、ダメ出しがあちこちから聞こえてきそう。皆さんもぜひ幻の風景を探し求めて散策してくださいね。

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さて、私達は『グロースターの仕たて屋』のアトラクションを見学し、そして挿絵に描かれた町の景色や通りを堪能した後、今夜のディナーとなるレストランへ向かいました。レストランは、幻となった景色の近くにある、キングス広場に面したレストラン「チェンバース(The Chambers)」へ。

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メニューは、トマトスープにパン。メイン料理は、ハンターズチキンと、コールスローサラダと生野菜に大量のチップスとオニオンリングフライ。ソースだったか忘れましたが、全体的に異様に辛くて、地元の人たちは辛い物好きというレッテルを貼りたくなるほどでした。
コース料理:20ポンド/1人

サウスゲート通りに面したホテルは、町中にあるため移動も徒歩で楽々ですが、夜は町の喧騒が響き渡り、部屋は通りに面していない方が静かだったかもと思いました。しかしこの日は移動もあり疲れたので、うるさいなぁと思ったのもつかの間すぐに眠りにつくことができました。

最後に、グロースターの町散策で、私が参考にさせていただいた資料を紹介します。

ひとつ目は、「グロースターの仕たて屋の家」アトラクションのギャラリーに展示されている挿絵の建物や通りの名前を特定したパネルです。展示されていたパネルに関しては、2018年英国旅行記のひとつ前のブログで紹介しています。

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「Beatrix Potter's Gloucester」キース・クラーク(著)フレデリィック・ウォーン社1988年(刊)
ふたつ目は、旅行前に偶然入手したこの書籍です。
この書籍は、『グロースターの仕たて屋』が生まれるきっかけとなった経緯や、ビアトリクスがグロースターのどこを描いたのかなどを解説した書籍です。これを読めばグロースターの旅は完璧です。私が入手したものは初版で、偶然にも著者キース・クラークさんのサイン入りでした。

こうして、グロースター滞在一日目が終了しました。グロースター滞在二日目は、グロースター大聖堂の見学です。この続きは次の旅行記ブログにて。最後までお読みいただきありがとうございました。
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ピーターラビットの生みの親ビアトリクス・ポターの愛好家で、作品について、開催されたピーターラビットのイベントやグッズ紹介、ピーターラビットの故郷英国について紹介するホームページ「ラピータの部屋」のブログです。
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