開館14周年記念企画 クリスマス特別企画展「ビアトリクス・ポターとジュディ・テイラー」のレポート

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埼玉県にある大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館は、「ビアトリクス・ポターとジュディ・テイラー」という開館14周年記念クリスマス特別企画展(12/25まで)を開催しています。

今年は誰も経験したことがないコロナ禍での企画展、毎年恒例の開館記念も春の記念企画はすべて中止になり、資料館も閉鎖していました。ようやく7月に再開し、感染予防に努めながら入場制限を少しずつ緩和して、この企画展開催の運びとなりました。

私達には計り知れないほどの尽力をされ無事開催となった企画展に、どうして参加したいと思いました。

しかし、11月中旬以降、感染拡大のペースが速くなり、ニュースを見れば見るほど怖い思いが先に立ち、どうしたら参加できるだろうかと考える日々でした。ここは感染リスクを少しでも下げるために一人で行くしかないと思ったのですが、しっかりと感染予防するので一緒に参加したいと言って下さる方がいて、私を含め4名で行ってきました。

私の感染予防は、移動は車で、移動中はトイレ以外はどこにも立ち寄らず、ランチはドアが開け離れた飲食売店の周りに誰もいないテーブルで、食べ終わるとマスクをしてお喋り。平日だったので、資料館のある動物園内も人は少なく、唯一大人気コーナーのクオッカ見学の時のみ20人ほどいらしたぐらいでした。

参加する前は何かあったらどうしようと心配でたまらなかったけど、出かけてしまえばそれほど心配には及ばなかったようです。もちろん油断は禁物ですが。

それでは話は最初に戻り、まずは埼玉県こども動物自然公園に入場する前に、代表者のみ入園者全員の住所、氏名、電話番号などの情報を記載するとことから始まりました。公式ページで(http://www.parks.or.jp/sczoo/)事前に登録も可能だったそうですが、そこは見落としていました。

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まずは資料館へ。学芸員のKさんの案内で、企画展を見学させていただきました。

クリスマス企画展の内容は、「ビアトリクス・ポターとジュディ・テイラー」で、ビアトリクス・ポター研究の世界的権威であるジュディ・テイラーにスポットを当て、彼女の功績を紹介されていました。

私がビアトリクスのことを深く知るきかっけとなったのは、彼女の代表書籍『ビアトリクス・ポター 描き、語り、田園をいつくしんだ人』でした。この書籍に出会って、ビアトリクスの人生そのものに感激しなければ、愛好家として研究の日々を送ることになるなんて想像もしてませんでした。

この企画展は、ジュディ・テイラーが児童書編集の仕事をされる中で、ビアトリクス研究の道に進まれるきかっけになった書籍の紹介に始まり、彼女の功績と、彼女自身が創作した絵本の紹介、それから絵本作家モーリス・センダックより命の恩人として感謝されたエピソードや、日本を代表する絵本作家、安野光雅さんとのエピソードなどを紹介しています。

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ジュディ・テイラー(1932年8月12日生まれ、現在88歳)
(資料館は写真撮影禁止です。特別な許可を頂戴し撮影させていただきました。)
ジュディ・テイラーについて紹介されているパネルは、大東文化大学の学生さんたちが日ごろの研究成果として制作されたものです。

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また今回はジュディ・テイラーが執筆した書籍の数々を閲覧できるように配慮されています。貸出書籍リスト一覧表があり、そこから借りたい本をスタッフの方が持ってきてくださいます。

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1986年に出版された『ビアトリクス・ポター 語り・描き・田園を愛しんだ人』(左)1996年に新しい発見などを追記して出版された改訂版(右)。翻訳版は2001年出版。

ジュディ・テイラーは、どうしてビアトリクスの研究家になろうと思ったのか、そういった最初の一歩はこれまであまり伝えられてこなかったように思います。この企画展はそういった部分にスポットを当てて紹介されていました。

ジュディ・テイラーがビアトリクスと関わりをもつきっかけとなったは、ビアトリクスの作品の版権を持つフレデリック・ウォーン社が彼女をコンサルタントとして迎え入れ、それに応えたところから始まります。

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そんな最初の一歩の書籍は、皆さんもよくご存じの「My First Year; A Beatrix Potter Baby Book」(1983年初版)で、日本語版は『ピーターラビットの赤ちゃん日記』(1984年初版)です。ピーターラビットとその仲間たちのキャラクターが散りばめられ制作された初めての赤ちゃん日記で、これが大変に好評で勢いがついたことと容易に想像できます。

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そしてもう1冊は、その翌年に出版された書籍「The Peter Rabbit POP-UP Book」(1984初版)で、日本語版は『ピーターラビットしかけえほん』(1984年初版)です。これもおはなしからピーターが飛び出る仕掛けでマグレガーさんの畑に忍び込み、子どもたちが夢中になって遊んだことでしょう。

こうしたヒット商品を生み出したことにより、彼女のビアトリクス研究への道が開かれ、単著だけでなく、共著も含め、素晴らしい書籍の数々が誕生していきました。

またジュディ・テイラーが編集した書籍の中で、ビアトリクスが子どもたちに送った絵手紙をまとめた書籍があります。もちろんノエル・ムーアに送った『ピーターラビットのおはなし』となった絵手紙はあまりにも有名ですが、ビアトリクスが送った絵手紙はそれだけにとどまりません。私が数えただけでも、ムーア家の子どもたち宛に送った絵手紙は57通ありました。

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こうした絵手紙を編集した書籍が「Letters To Children from Beatrix Potter」(下、左 1992年)で、後に共著として出版された「The Beatrix Potter Collection of Lloyd Cotsen」(2004年)にも、先の書籍に紹介されていないムーア家に送った絵手紙絵が掲載されています。

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ビアトリクスに関する書籍だけでなく、自ら執筆した絵本シリーズ。

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現代の児童文学界を代表するモーリス・センダックは、1967年心臓発作を起こし、その時に一緒にいたジュディ・テイラーの救命処置により彼の命は救われました。その後出版されたセンダックの絵本『まよなかのだいどころ』(1970年)には、命の恩人として彼女の名前(Taylor's)を書き込んだというエピソードと共に、センダックの代表作の絵本も紹介されていました。

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日本を代表する絵本作家の安野光雅さんとジュディ・テイラーとのエピソードも紹介されていました。1974年ケイト・グリーナウェイ賞の特別賞を受賞できたのは、選考委員だった彼女がその卓越した価値を主張し、特例で認められたそうです。1981年に出版された『旅の絵本III』は、ジュディ・テイラーに感謝を込めて犬と戯れる彼女と、右上にチュウチュウおくさんと話をしているビアトリクスの姿が描かれました。私達もパネルでこのエピソードを読み、どこにその姿が描かれているのか、見つけるのが大変でしたが、ぜひ皆さんも探してみてください。

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それから、ロンドンに本部を置くビアトリクス・ポター・ソサエティでは会長を務め、ソサエティから発行された冊子も数多くあります。紹介させてもらった書籍は、ほぼ閲覧可能になっていますので、ぜひ実際に手にとってご覧ください。これだけのビアトリクスに関する書籍や冊子が一堂に揃うのは、ビアトリクス・ポター資料館ならではです。

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ロイヤル・ドルトンのフィギュアたち
企画展が開催されている2階の研修室の隣の部屋に展示されているグッズコーナーでは、毎年クリスマス企画展の期間中、趣向をこらした展示が行われます。今年は、ロイヤル・ドルトンのフィギュアが展示されました。これらは、私達ピーターラビット好きが集まったグループが毎年グッズを提供し、大東文化大の学生さんたちがアイデアを練って展示してくださっているものです。

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絵本から飛び出してきたかのように忠実に再現されているフィギュアたち。少しでもその様子が伝わるようにとディスプレイに絵本の挿絵を印刷して、フィギュアと挿絵を見比べられるように工夫されています。

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さらにもっと詳しくご覧になりたい方は、ロイヤル・ドルトンのフィギュアのキャプションをまとめたファイルもございます。

2003年に製造を中止してしまったロイヤル・ドルトンのフィギュアですが、未だに全世界で人気が高く、そんなフィギュアがこれほどまでに見られるのは企画展ならではですので、こちらもぜひご覧ください。

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資料館のある埼玉県こども動物自然公園に今年7月から一般公開されたクオッカ。
オーストラリアのそれも限られた地域、ロットネスト島ではその生態が維持されているものの、外来種により減少の一途をたどるクオッカ。ロットネスト島では、1万から1万2千頭ほどが生息し、野生で見られるのは唯一この島だけだそうです。

クオッカが一躍有名になったのは、世界一幸せな動物ということで、何が幸せなのかというと、笑ったように見えるその表情が幸せそうに見えるところからだそうです。飼育員さん曰く、クオッカは口角が上がっているので、下から顔を見上げると、なんとも言えない幸せな笑顔が見られるとのこと。しかし、一般見物客がその幸せな顔を見るのは至難の業です。

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近くに寄って来てくれたけど、食べるのに夢中なクオッカ。上から目線だと、怖い顔にしか見えない。

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動きが素早すぎて撮影失敗。こんなにも素早い動きなら天敵から逃げられそうですけれどもね。この幸せ笑顔は、地べたにはいつくばって撮影しないと撮影できそうにないですが、日本では唯一ここだけしか見られないクオッカもぜひご覧ください。

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カピバラ温泉もクオッカの近くなのでお見逃しなく。とっても癒される光景です。

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おまけ。建物の中から仲間のカンガルーを見学するカンガルー。建物内にいるから随分リアルな剥製かと思ったら本物でした!

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資料館の近くにある「もりカフェ」でひと休み。コロナ対策のため、店内での飲食は禁止となっていました。

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レポートの最初に紹介した書籍『ビアトリクス・ポター 描き、語り、田園をいつくしんだ人』の翻訳版。この書籍の前書きに、ジュディ・テイラーが日本人に向けてのメッセージが掲載されていますのでその一部を紹介したいと思います。

「ピーターラビットとその仲間たちを生んだ非凡な女性作家が、じつはどんな人物だったのか、そのことを知っている人はどれだけいるでしょうか?」

ピーターラビット人気が高まり始めた1993年に来日を果たしたジュディ・テイラーは、日本での盛り上がりに驚き、そうした人々に絵本のキャラクターだけではない、ビアトリクスの生涯でやり遂げたことを知ってもらいたいという思いが込められた、彼女の記念すべき最初にビアトリクスについて執筆した書籍の翻訳版です。この翻訳版が出版されて19年経ちますが、今でも新鮮な気持ちで読むことができます。

この企画展は、ジュディ・テイラーの魅力がつまった、そして改めて読み返したくなる素晴らしい企画展でした。以上、先月25日に行ってきました企画展のレポートです。最後までお読みいただきありがとうございました。
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ピーターラビットの生みの親ビアトリクス・ポターの愛好家で、作品について、開催されたピーターラビットのイベントやグッズ紹介、ピーターラビットの故郷英国について紹介するホームページ「ラピータの部屋」のブログです。
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