今年はピーターラビットがこの世に誕生した130周年記念?!絵手紙を原語で読むその1

今から130年前の1893年9月4日に、ビアトリクスはノエル・ムーアに宛てた絵付きの手紙(絵手紙)を書きました。

手紙の書き出しは「あなたになんて書いて良いのか分からないので、little rabbitsの話をしましょう。名前は~」と始まり、「フロプシー、モプシー、カトンテールとピーターです。彼らはお母さんと一緒に大きなモミの木の根元(the root of a big fir tree)にある砂の穴(sand bank 絵手紙はハイフォンなし)に住んでいました」と続きます。

翻訳って正解があるようでないので、日本語訳でも楽しいおはなしですが、原語で読めばさらに楽しいのではという思いから、いろいろと気づいた点を発信していきたいと思うようになりました。

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絵手紙1ページ目
1992年発行「Post Card Wallet & Postcards(8 postcards and Facsimile of original letter」より

書き出しにあった「little rabbits」は、生後何ヶ月ぐらいを指すのかという点から考えたいと思います。

絵手紙1ページ目の絵を見ていただくと、木の根のすき間から頭を出している4匹のウサギがいます。アナウサギが巣穴から顔を出し始めるのは、生後約1カ月月から1ヶ月半ぐらいです。その後の行動を考えると、ピーターたちは生後3ヶ月から5ヶ月と考えられます。生後6ヶ月は、人間の年齢で言うところの18歳から20歳にあたるので、それよりは下になります。

次にフロプシーとモプシーとカトンテールはどうやって区別していますか?

フロプシーたちは、同じ色のケープを着ていますし、常に一緒に行動し区別できません。しかし、絵手紙1ページ目(上の画像)を見ていただくと、それぞれのウサギの下に名前を記載しています。前足をなめているのがフロプシー、足を投げ出して寝ているのがモプシー、丸まって寝ているのがカトンテールだと分かります。

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絵本の1ページ目
「The Tale of Peter Rabbit」2002年出版

絵本は、その当時の印刷技術の関係で絵の下に文字を入れることができず、この部分をカットしました。その代わりの工夫として、テキストで行替えし紹介しています。
         フロプシー、
        モプシー、
       カトンテール、
    そしてピーター

これを絵本の挿絵を見ながら当てはめると、木の根元の穴の右側に頭を出しているのが、フロプシー、真ん中から2匹のウサギがモプシーとカトンテール、そして尻尾だけ出しているのがピーターとなります。

さらに絵本のページをめくってフロプシーたちを見比べると、3匹のウサギの内、必ず2匹は動作がシンクロし、1匹だけ違う動作をしています。3匹で並んで行動する際、先頭に立つのは、フロプシー(1番最初に紹介され、モプシーとカトンテールのリーダー的存在)で、モプシーとカトンテールは常に寄り添って行動しています。こう考えると自然に区別がつくと思います。

フロプシーたちはピーターの姉なの妹なのか教えて?

海外は、兄弟、姉妹の区別をつけるということはしないそうで、見たらどっちが上だか分るでしょうという文化なんだそうです。日本人は意外と気にしますよね。これについておはなしの中で決定的に分かる記述はありません。またビアトリクスが残した膨大な資料(スケッチや書簡など)にもふれられていません。

でもこの絵手紙が、ノエル宛に送られたことを考えますと答えは簡単です。ノエルは、ムーア家の長男で、絵手紙を受け取った1893年9月時点で当時5歳でした。年子の次男エリックは4歳、長女のマージョリーは3歳、次女のウィニフレッド(フリーダ)は2歳、三女のノーラは生後1ヶ月でした。もう分かりますよね。ビアトリクスはノエル宛に送っているのですから、フロプシー、モプシー、カトンテールはムーア家の3姉妹であり、ピーターにとって妹たちになります。こう考えるとすごく納得できます。

ここでさらに疑問がわきます。もしノエルの兄弟たちを思って書いたのなら、年子の弟のエリックはどうしていないの?

ほら、深く読めば読むほど沼にはまりますでしょう(笑)

ビアトリクスは、ノエル宛の絵手紙を読んでエリックが寂しい思いをするんじゃないと思い、翌日1893年9月5日にエリック宛に『ジェレミー・フィッシャーのおはなし』の原型となる絵手紙を書いて送りました。このようなビアトリクスの気遣いからも、フロプシーたちはピーターの妹と設定したのではないかと思う根拠になっています。

絵手紙の方に戻って、「Cottontail」の名前にハイフォンがないなどの細かい部分はさておき、ピーターたちが暮らしていた大きなモミの木はどれぐらいの大きさなのか?とか、ウサギの巣穴って何?と色々な疑問がわいてきませんか?

モミの木(a big fir tree)はヨーロッパモミの木で、樹高が50m前後に達します。モミの木の「fir(ファー)」がウサギの毛「fur(ファー)」と読み方がまったく同じで、とある先生が「これは掛け言葉になっています」と、先生の講演会や読み物等で紹介されています。

ビアトリクスの作品は、こういった掛け言葉がちりばめられ、音を表す擬声語や、物やその状態を示す擬態語、いわゆるオノマトペも楽しめ、それがリズムとなり作品の面白さ、楽しさになっています。

ウサギの巣穴についてですが、ピーターたちは地面に穴を掘って暮らすアナウサギ属に分類されます。アナウサギの巣穴は、排水が良い斜面に掘られ、入り口の幅は10~20センチの丸い穴、短く刈られた草地の近くに住んでいます。

「ピーターたちは砂の穴に住んでいる」とあります。これをアナウサギ属の巣穴に当てはめると、地質により巣穴に住む集団の数が相違するという特徴があります。理由は、砂のような硬くない地質は長いトンネルが掘れないためです。こうしたことから、近くに従兄弟のベンジャミン・バニーが住んでいますが、一緒に住むのではなく、それぞれの巣穴で住んでいるのも地質の影響というキーワードが盛り込まれているのです。

名作と呼ばれる定義は「誰もがそれを知っている有名な作品である」ということを指しますが「見る人の目に耐えられる作品のみが世の中に残る」ということでもあります。

今年はビアトリクスが絵本作家となる原点となったノエルに宛てた絵手紙を書いて130年の節目の年です。改めて原点に立ち返り日本語訳もいいけれど原語で読むのはもっと楽しく深みにはまってくださいね。

その1としましたが、その2はあるのでしょうか?最後までお読みいただき誠にありがとうございました。また気が向いたらのぞいてくださいね。

アナウサギの巣穴に関して『うさぎの不思議な生活』P75参照
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ラピータ

ピーターラビットの生みの親ビアトリクス・ポターの研究家で、作品について、開催されたピーターラビットのイベントやグッズ紹介、ピーターラビットの故郷英国について紹介するホームページ「ラピータの部屋」のブログです。
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