原書タイトル:
「V&A Introduces: Beatrix Potter: Artist, Conservationist, Pioneer」
2022年12月15日 Puffin/V&A 出版
日本語タイトル:
『ビアトリクス・ポター物語:ピーターラビットと自然を守った人』
2023年9月4日 化学同人 出版
キャティ・ウーリー(文)
ジニー・スー(絵)
中井はるの(訳)
河野芳英(監修)
ハードカバー、32ページ、22.8x19㎝
この書籍は、ロンドンにあるヴィクトリア&アルバート(V&A)博物館によるアート入門シリーズで、ウィリアム・モリス、ヴィクトリア女王、フリーダ・カーロなどシリーズ本があります。こちらは、キャティ・ウーリーがジニー・スーのイラストを添えて紹介するビアトリクス・ポターの生涯をまとめた絵本です。生い立ちから始まり、絵本作家として成功し、さらにキャラクタービジネスの先駆者となり、自然保護活動家としておはなしの舞台 湖水地方をいかにして守ったかを、それぞれの項目を見開き1ページで、短く分かりやすく紹介しています。
V&Aは、ビアトリクス・ポターの世界最大のコレクションを有する博物館で、そのコレクション数は2500点以上、さらに増え続けています。昨年、この書籍にも紹介されている自然保護活動と保全活動を行っているナショナル・トラストとV&Aが協力して「ビアトリクス・ポター:自然に魅せられて」展を開催したことも記憶に新しいです(現在アメリカのナッシュビルにあるフリスト・アート・ミュージアムで巡回中、9月17日まで)。
V&Aが紹介する書籍と聞き、これまで見たことのないビアトリクスの作品が掲載されているか楽しみにしていたのですが、今回はそういうコンセプトではなかったようです。ジニー・スーさんのカラフルな彩色のイラストがメインで、ビアトリクスの絵がかすんでしまっているかのように見えるのが残念です。子供向けということであれば、これぐらい派手な彩色の方が印象に残って良いかもしれませんが。
1点嬉しかったのは、ビアトリクスの絵本中で取り上げてもらえるのが少ない『グロスターの仕たて屋』が紹介されていたことです。私はこのお話の出版100周年の年、2003年にグロスターへ旅行し、仕たて屋ネズミの飾りが町のあちこちで見られてお祝いムード一色でした。ビアトリクスも、まさか世紀を超えてこんなにも愛されるお話になっているとは想像だにしなかったことでしょう。
『グロスターの仕たて屋』もピーターラビット同様に私家版を出版していて、大好きなナーサリーライムをたくさん詰め込んだ私家版(商業版はカットされてしまったので)は、彼女のお気に入りの1冊となりました。補足としましては、全ページ白黒と紹介されていた私家版『ピーターラビットのおはなし』は、口絵だけカラー印刷です。
この他のビアトリクス・ポターを紹介する子供向け本としましては、伝記『ビアトリクス・ポター ピーターラビットはいたずらもの』(エリザベス・バカン 文/上田まさ子 訳 1989年出版)と、『素顔のビアトリクス・ポター 絵本をつくり、湖水地方を愛し、農園生活を楽しんで』(エリザベス・バカン 文/吉田新一 訳 2001年出版)の2冊あります。図書館に行くとどちらかは必ずあると思います。夏休みになると「貸し出し中」になったりするので、どなたか興味あるお子さんがいらっしゃるのかなと嬉しくなります。
それから翻訳版がないのですが、子供向けにビアトリクスを紹介している本で、「Beatrix Potter and Peter Rabbit」があります。これは1992年にフランスで制作されたもので、翌年フレデリック・ウォーン社が英語版を出版しました。さらに2002年に改訂版が出版されました。
それから2005年に内容を改めて「The Tale of Peter Rabbit and Beatrix Potter」が出版され、2016年に改訂版が出版されました。改訂版というと中のページも変更があるように思いますが、表紙のみリニューアルし中身は同じです。
ナショナル・トラストが発行した冊子「Beatrix Potter Her Story」というのもあります。これは暗号日記にも触れていて、子供向けにとても分かりやすく暗号の解説があるので助かります。
これら3点は、いずれもビアトリクスの絵だけで構成されているので、安心してページを開くことができます。
この他にも最近出版されたものが2冊あります。どちらも入手していないので紹介文は検索してご覧ください。
『ピーターラビットのふるさとをまもりたい』
2020年11月25日 あかつき教育図書 出版
リンダ・エロビッツ・マーシャル(文)
イラリア・アービナティ(絵)
おびかゆうこ(訳)
33ページ
『ビアトリクス・ポターの物語: キノコの研究からピーターラビットの世界へ』
2021年7月15日 西村書店 出版
リンゼイ・H・メトカーフ(文)
ジュンイ・ウー(絵)
長友恵子(訳)
33ページ
子供向け絵本ってどれも約30ページで構成されているのですね。私がもしビアトリクスのことを執筆したら、1年のエピソードだけで30ページぐらい語りそう(^^;短くまとめるの苦手です。最後までお読みいただきありがとうございました。
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