大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館発行のニュースレターVol.23創立100周年特別号にエッセイを寄稿

ご報告が遅くなりましたが、タイトルに書きました通りニュースレターにエッセイを寄稿しました。

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大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館 2023年9月発行
ニュースレターVol.23 創立100周年特別号の表紙

このニュースレターは、2010年12月に第1号が発行され、そこから年2回ペースで(1回の場合も)発行されています。今年は大学創立100周年で、ニュースレターも特別号としてページ数を増やして発行されました。

ビアトリクス・ポター(BP)研究家の端くれとして情報を発信している私に、「ビアトリクスがテーマだったらどのような内容でも良い」というエッセイ執筆の依頼がありました。

「憧れのニュースレターに、私なんかが執筆してもいいんですか?」と思いつつ、「こんなチャンスは二度とこない」と思って、「書きます!書かせていただきます」とお返事しました。

「さて、何を書きましょう」と考えた時、私の中でいつも心に引っかかっていた事柄を思い出しました。それは「死んだウサギをお湯で煮て骨格標本とした」という事実です。日本人の私としましては、「なんて残酷な!そのようなことを敬愛するビアトリクスがするはずがない」と思っていました。

「そうだ!ビアトリクスを語る上でどうしても避けて通れない事実なら、もう一度きちんと調べ直そう」と思ったのです。本当にそういう事実があるのかどうか?!

私の調べた限りでは、ビアトリクス自身がウサギをお湯で煮て骨格標本としたという事実を見つけることができませんでしたが、彼女の伝記や研究書を比較すると、ウサギを煮てと明記したものと、死んだ動物を拾ってと書かれたものもありました。

ビアトリクスは、アッパー・ミドル・クラスの家に生まれ、ヴィクトリア朝時代の慣習により学校には通わず家庭教師から学ぶ生活を送りました。夏は一家で避暑地に何カ月も滞在し、その主な目的は「釣り」や「狩猟」を通じて、政治家や牧師や芸術家を招き交流することです。子供たちはそういう中で育ち、自然に触れ、生き物と戯れ、時には動物の死体も見つけることもあったことでしょう。

お屋敷には、狩猟の手伝いをする地元の猟師番が常駐し、ある日死んだリスを見つけたビアトリクスと弟のバートラムが、猟師番に研究できるように煮詰めて骨格を取り出して欲しいと頼んだのが始まりのようです。

ビアトリクスの研究熱心な様子は、その時代特有なものでした。ヴィクトリア朝時代の博物学への関心は当時の流行だったからです。彼女の知りたいと気持ちが、動物の標本づくりへと掻き立てたのでしょう。もしヴィクトリア朝ではなく、その次の時代に生まれていたとしたら、間違いなく博物学者への道へと進んだに違いありません。彼女が残したものが、その事実を裏付けるし、だからこそどんな人が見ても何かを感じ取ることができる名作を生みだしたということに繋がるのだと思います。

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このニュースレターは、大東文化大学の学長さんの言葉に始まり全8ページ、大東文化大学の先生方による珠玉のコラムが続く中に紹介していただいてます。私のエッセイはお目汚しで恐縮ですが、疑問に思ったことを消化するためにも徹底的に調べることができ、大変貴重な時間となりました。

このニュースレターは、今月21日から来月24日までクリスマス特別企画展「ビアトリクス・ポターとイギリスのクリスマス」が開催されるビアトリクス・ポター資料館で無料で配布されています。もしよろしかったらお手に取ってもらえると嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました。

開館17周年記念企画 大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館 クリスマス特別企画展の詳細は、こちらでご覧ください。
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ピーターラビットの生みの親ビアトリクス・ポターの研究家で、作品について、開催されたピーターラビットのイベントやグッズ紹介、ピーターラビットの故郷英国について紹介するホームページ「ラピータの部屋」のブログです。
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